8 章 界面活性剤、足長蜂の悲劇
今日、博士は最近気になっている事を片付けようと早起きをした。

開院してから今まで西側窓の左側一部が書棚に隠されている事で夕方少し暗

く感じてしまう事である。

書棚横の収納箱など動かして窓が全て見えるようにした。

なんの気無しに外を見ていたら窓の上部になにやら丸い物を見つけた。

それは、ガラス面上の所に足長蜂が巣を作っていた物だった。

ちょうど書棚の陰に隠れて今まで気が付かなかった。

弱ったな、もっと巣が大きくなって蜂の数が増えて来ると来院する患者さん

にも迷惑が掛かってしまうかもしれない。

じぃーっとガラス越しに蜂の観察をしながら博士は有る事を思い出した。

電気屋のおっちゃんに蜂の巣の駆除方法を聞いた事が有った。

まだ蜂達は朝早いからほとんど巣に留まっている、あれを試してみよう。

博士は洗濯機の所へ行きバケツに洗濯洗剤をひとつかみ入れて水をバケツ

三分の一位注ぎ泡が立つくらいかき混ぜた。

巣の所に行き一気に洗剤液を掛けた。

見事に命中して洗剤液と一緒に足長蜂もほとんど地面に落ちた。

本当に一瞬の出来事である。

博士は効果は聞いていたがこれほどとは思っていなかった。

2〜3匹かろうじて難を逃れた足長蜂もいたが、すぐに何処かへ飛んで行って

しまった。巣を棒で取り除き落ちた蜂をごみ取りで片付けた。

奏効しているまに開院の時間が来てしまうので急いで食事を済ませる為家の

中に戻った。

それから3日位ガラスに洗剤の白い模様が付いたままになっていたが忙しさに

感けてそのままにしておいた。

夕方、患者さんが途切れたので夕日をぼーっと見ていたら、足長蜂が3匹こち

らに向かって飛んで来た。

ガラス越しなので安全だし良く観察出来るので近くで見ていたら、2匹が

ガラスにまだ少し付いていた巣の残骸に止まってなにやら口でもぐもぐやり

始めた。 あんな風に物を食べるのか っと思っていた瞬間ほぼ同時に2匹の

足長蜂はストンと落下した。

あれっと思いながらもう一匹の足長蜂を見ていたら、その様子を見ながら

ホバリングしていたが2分位経った頃何処かへ飛んで行った。

外へ出て蜂を確認したらすでに絶命していた。

もぐもぐと巣の残骸を食べていた時間は1分も無かったと思う、この事実は

足長蜂にとって洗濯洗剤が猛毒で有る事がわかる。

巣の残骸に滲みていた洗剤液を体内に取り入れてしまった事による結果だ。

しかし、足長蜂も結構頭が良い、退治した時も飛び立った者は直ぐにその場

を離れて行ったし、今度も仲間が落ちるのを見ていてそれ以上近づかなかっ

た。

加筆+++ 洗剤液 これは界面活性剤のかったまりで有る、メーカによって少しは含有成分は違うと思うがほぼ同じでしょう。
粉状、液状どちらでも同じで有る。
人間には皮膚の弱い人は手荒れを起こす程度で済むかもしれないが足長蜂にとってはとてつもない猛毒である。
足長蜂は巣の外側に止まっているがスズメ蜂は巣の中に居る。この液がスズメ蜂にも効果が有るとしても巣の中に液を入れる事は至難の業で有る。
絶対にスズメ蜂にはこの方法を使用しないで下さい。
洗濯洗剤液をいつも不機嫌にさせてくれる蟻にも試してみたが、全く効く様子が無く、液を掛けてもピンピンしていた。
それでは、っと、風呂場で使うカビ取り漂白剤の原液を掛けたら、今度は酔っぱらったような足取りになった。
やはり、餅は餅屋、蟻が喜んで運んで行く蟻退治の薬剤が一番でしょう。