5 章 ゲーム脳
彼の治療院には助手などいない。

一人でも仕事が出来る様に工夫された作りになっている。

待合室の様子は把握出来るが待っている患者さんからは治療中の患者さん

は見えない。

治療が終わりそうになったので次の人を確認すると下を向いたままの姿勢

がしばらく見えていた、何処か悪いところが我慢出来ないくらい痛いのか

なっと思いながら患者さんの交代作業をして治療室に入れた。

治療室に入って来た人は痛みがひどいような素振りが見えない。

中年の主婦らしき人は、最近肩が凝って仕方が無いと話して来た。

下を向いていた訳が判った、彼女はルービックキューブを持っていて待っ

ている間も盛んにプレーしていた為だ。

最近年甲斐も無くこのゲームにはまってしまい肩こりがひどいとの事。

テレビで見る達人たち見たいになりたくて練習をしているらしい。

肩こりの治療を行いながらルービックキューブの話題で盛り上がった。

どうしてあんなに速く出来るのか不思議だと話す彼女に、彼はその事に関

して知識を持ち合わせていなかったが多少なりとテレビ番組を見たときの

話をしてやった。

人間の能力は底知れないものが有り、中がどうなっているのか不思議で有

る、多分多くの時間を掛けて出来る様になったとか言いようが無いが、一

つ興味深い事実が有った。

十何秒かで終了させてしまうがその時頭の思考回路は停止していて運動回

路だけが活動している状態らしい。キューブの色を見た瞬間にもう手が動

いている。不思議としか言いようが無い。

このように考えなくても行動出来る状態をゲーム脳と言うらしい。

考えなくても行動出来る、なにか良い事ずくめのような気がするが、これ

がとんでもない事になりかねないので有る。

考えなくても行動する、これはアルツハイマー病の患者さんの行動に似て

いる、つまり、この事が進行するとアルツハイマーになってしまう事にな

る。

あまり、ルービックキューブのゲーマーがアルツハイマーになったと言う

話を聞いた事が無いが小さい子供がテレビゲームの種類によってはこれに

近い現象になる事が有るので注意を促しているお医者さんが居た。

こんな話をしながら治療が終わる頃患者さんに達人にならない方が頭の為

には良いかも知れませんよ、と言ってあげた。

たぶん頭の老化を防ぐ為の指先運動と、考えると言う事は、達人にならな

い方が良いでしょう。

ルービックキューブでも最大に頭を使わなければならないジャンルは目隠

しゲームです、最初にやり方を覚えておいて目隠した状態で仕上げる。

頭の中の活動状態を調べる機械で見ると活動を示す真っ赤かの範囲が頭

中に見られるそうです。

彼もキューブを借りて少しやって見たが全然解く事が出来ず頭をかきなが

患者さんを見送った。

加筆+++ゲーム脳についてはお子さんの例が上げられていますが
大の大人の方にもその現象が現れる事をご存じですか。若年性アルツハイマー病に似たような状況らしいですが詳しく知りません。
ただ、そのような状態に陥っている方を今まで見てきました。
ゲーム脳は頭で思考しなくても手足を動かせる事です。
ルービックキューブを例に上げると完成させるのに何秒とか十何秒とかで出来る神業です。
ロボットにこのゲームを行わせる時はまず、六面を確認してから揃え始めますが全ての動作がプログラムされた通りに行われています。このプログラムを作る人はルービックキューブを完成出来る方でしょう。ロボットは動作からして人間に勝つ事は出来ないでしょう。

では、何故このゲームをしている方たちがアルツハイマーに似た症状にならないか、と言うのは、時間的に短い事です。テレビゲームなどでは長時間に及ぶ事が想像されます、その間頭脳は眠っているに等しい状態です。完成されたプログラムを実行しているだけで運動命令だけしか動作していません。
もう一つの例としてブラインドタッチの練習です。
毎回プログラムされた文字列を打ち込むだけですから練習を進めるとルービックキューブと同じような状態が現れ、確かに速くタイピング出来て来ますが指の運動能力が向上しただけなのです。
ブラインドタッチは私の子供達にも行わせましたが、練習が進むに連れて確かに速くなりましたが、そんな中ソフトで行うのではなく本を見て文章を打ち込むようにさせたらいつもの三分の一位の速さにしかならなかった

練習を積み重ねた事で打ち込む順番を体が覚えてしまっていて指先だけで行っていただけなのです。

このような事を仕事に置き換えて見てみましょう。
毎日同じような行動しかしない仕事。
例として毎日伝票整理(色々な伝票が有ると思いますが行っている内容は変わらないです)だけを行っている方。
周り目にはバリバリ仕事をこなす猛烈社員に見えていてもある日その病魔が襲って来る事が有ります。
よく耳にするのはこの仕事一筋何十年と言われる方々です、いざその職業からリタイヤした時、自室にこもってしまう方が多いそうです。
適当に仕事以外の趣味を持って普段から活動している方は仕事から趣味に行動をシフトするだけで活動停止状態にはなりません。
多くの不幸な状態の方々を知っていますが例に出すのは控えます、傾向適に有る職業の方が多いと感じますが例に書く事は出来ません。
このような状態にならない為には本人の自覚と周囲の方の気配りが必要ですが、本人及び周囲の方も仕事が出来る人間との認識が有り、なかなか気づく事は出来ないようです。

ゲーム脳とは、少し分ってもらえましたか。
多くの訓練をされた方に現れる物で全てが悪と言えないのです、その瞬間集中しなければならないような時、プログラムが済んだ動作を的確に行える為に。
例えば、ゴルフにおいてその時点の打ち方を決めたら何が起きてもイメージした通りに体が動くようになる。
ラフから打つとき芝生の抵抗にあっても大丈夫。
ギャラリーの不注意な行動にも左右されない。
静止状態から動き始めたらプログラムされた行動が出来る。
プロならアドレスを決めたら目を閉じてもショットが出来るでしょう。
そのような練習を積んで置けば例えばカメラのシャッター音位ではびくともしないプレーが出来るでしょう。

タイガーウッズが小さい時の練習で父親は無理に妨害するような行動を取ったそうです。
もちろんタイガーは怒りました、しかし父親はどのような状況でも冷静に 集中出来なければ優勝など出来ないと教えた。 2009年12月31日